依田宣夫の一言コラム

                              第11回から第20回    

                                             

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   第20回

  贈収賄事件と消費満足

   第19回

 「お金を使うということ」と「内部情報」

   第18回

  値上げラッシュと家庭経営

   第17回

  だます人に、だまされない

   第16回

  家計の金融資産残高の減少と家庭決算書

   第15回

  老後のあとの注意・・その2

   第14回

  老後のあとの簿外債務に注意 

   第13回

  異端児と複式簿記

   第12回

 「事業価値」と「家庭価値」

   第11回

ロビンソン・クルーソー」も利用した複式簿記!

 

 

           第20回 贈収賄事件と消費満足

相手の会社から無償で数十万円のお金をもらったり、接待を受けた見返りに、その会社の便宜を図ったという贈収賄事件が、世間で話題になます。これによって、便宜を図ってもらった会社が、例えば、見返りとして、売上額が10億円、売上原価が6億円の仕事を受注したとすると、利益は4億円になります。一方、接待受けたほうは、例えば、ゴルフ1回につき6万円として、その回数が一年間で100回だとすれば、合計金額は600万円になります。これ以外にも、カラオケやクラブでの接待、贈り物などに使ったお金が1千万円だったとします。その合計金額は1600万円です。これが会社の費用だったとしても、会社の利益は、3億8400万円になります。

一方、接待を受けた側からすると、接待を受けているお金は、会社から支払われていて、自分の懐から出ているお金ではありません。もし、接待を受けている人が、このお金は、本来、自分のもらうべき正当な報酬だと考えるのであれば、接待を受けるのではなくて、そのお金を、会社に請求すべきなのです。

また、お金を使うことによる消費満足と言う点から考えると、接待を受けているお金が、もし自分の収入として、自分の預金口座に入金したお金だったとしたら、ゴルフなどにお金を使うのでしょうか。さらに、お金を使うことによる消費満足について考えたとすれば、このようなお金の使い方をするでしょうか。お金は使うためにあるということは、自分が主体的に行動してお金を使うことなので、このようなお金の使いかたをすることによって、充分な消費満足を得ることができるのです。 

 見返りを要求されるような、接待を受けたお金の使い方で、その人自身の消費満足は、最大のものになっていたのか非常に疑問になります。本来、ビジネスで自分の紹介料として、正しい手続きを経てもらったお金だとしたら、その人は、どのようにこのお金を使っていたのでしょうか。

収入は労働の対価としてもらうものです。それ以外に、接待など目に見えないで、無償で入ってくるお金は、そのお金の使われ方を良く考えないと、とんでもないことになります。会社員であれば、会社と個人生活は当然区分すべきだし、自分の行動に対する説明責任を果たさなければなりません。

 そして、自分のためにお金が使われるときには、自分が主体的立場に立ち、消費満足について考え、その支出が正当なものか、判断することが大切なのです。

                           (2008//15)    

 

        第19回 「お金を使うということ」と「内部情報」

(1)  収入とお金と生活

私たちは、労働の対価として給料等の収入を得て生活しています。収入は、通常お金という形で私たちの手元に入ります。しかし、私たちは、このお金を貯めるために生活しているわけではありません。飲まず食わずで、ただお金だけを貯めたとしてもそれは生活しているとはいえず、お金を貯めることを目的とした人生となってしまいます。

 お金は、私たちが欲しい物を手に入れるための交換手段として使うものです。私たちがお金を使ったとき、お金を使ってよかったと思える、つまり満足が最大であれば、そのお金は有効に使ったことになるのです。お金を使うこと、すなわち、お金を消費することによって得られる満足のことを「消費満足」といい、この「消費満足」を最大にするようにお金を使う方法を私たちは考えるべきだと思います。しかしながら、「消費満足」を最大にするならお金をいくらでも使ってよいか、というとそういう訳ではありません。私たちの家庭生活は、健全な家庭生活を維持し、発展させていかなければいけません。健全な家庭生活を維持しながら、いかに満足した消費生活を送っていくか、ということを考える必要があります。

(2)   お金を使うこと

お金を使うということは、生活をするということです。お金を使うということ、すなわち、お金を消費すると言うことは、「現在の消費ため」と「将来の消費ため」とに分けられます。

「現在の消費ため」に消費をするということは、現時点で財やサービスを購入すること で、例えば、食料品の購入とか水道や電気代の支払等があります。

「将来の消費ため」に消費をするとは、将来の消費に備えてお金を運用することで、株や債券の購入等の投資がこれに当たります。

(3)   意思決定

お金を使うということは、お金を使うという意思決定をしなければいけません。

私たちは、この意思決定を何に基づいて行っているのでしょうか。私たちは、主として自分たちが持っている情報によって意思決定をしているのです。

この情報は、「外部情報」と「内部情報」という2つの情報に分けられます。

「外部情報」というのは、メディアや個人のネットワーク、雑誌、テレビ、友人等からの情報をいいます。

「内部情報」というのは、自分で作った自分たちだけに関する情報で、家庭決算書のような会計情報がこれにあたります。

私たちは、この2つの情報を持つことによって、お金を使うときの意思決定がより正確なものとなり、危険を小さくすることが可能となります。片方だけの情報しか持っていないとしたら、私たちの意思決定の危険性は大きくなってしまうでしょう。

また、お金を使うという意思決定をする際には、「いつ」、「何のために」、「どう使うか」ということを考える必要があります。例えば、自動車などの高額品を購入する場合には、特に注意が必要です。

(4)  結果に対する満足度

 結果に対する満足度は、人により家庭によりさまざまです。各個人や各家庭のライフスタイルや価値観が違っていますので、お隣の家庭と比較をして結果が良かったとか悪かったとかを、判断するようなものではありません。

結果の成否は、あくまで自分たちの価値観に照らした満足度が唯一の尺度となります。健全な家庭を中長期に渡って維持していけるということを前提にして、この満足度を最大にしていくべきです。

(5)   家庭決算書の役割

家庭決算書は、お金を使うという意思決定をするとき、家庭の内部情報を提供するツールとして役立つものです。

家庭の内部情報である家庭決算書には、働き方、暮らし方、家族の成長など、家庭生活       のすべてが、家庭の会計情報として、数字で記録されています。

家庭決算書は、家庭生活における必需品のひとつとして利用することが有効だと思います。   

                                         (2008//11)      

                    

            第18回 値上げラッシュと家庭経営

4月からの値上げラッシュは大変です。

すでに、昨年には、コクヨのコピー用紙が、(紙製品の原材料となる)チップ・パルプなどの価格高騰を経費削減努力だけでは吸収しきれなくなったという理由で、平均約15%値上げしました。また、日清製粉や日本製粉はめん・パンメーカー向け業務用小麦粉の価格を、政府の小麦売り渡し価格が10月から平均10%上がるのを受けた措置という理由で、11月1日出荷分から25キロ当たり最大で180円引き上げました。

そして、新年度がスタートする4月からは、さまざまな制度改正に加え、4月中旬以降に小麦粉や小麦粉を原料とする商品などが順次値上げされる見込みで、小麦粉、小麦粉を使ったパスタ、カップ麺などの小麦粉関連商品、チーズ、油、牛乳、しょうゆなどが、だいたい1割程度の値上げになると言われています。

 
インスタントラーメン、外食、そしてオフィス用品とつづく値上げラッシュ。毎日の生活に深くかかわるものだけに、頭が痛くなるだけでなく、家計を圧迫することになります。

このような値上げラッシュの事態にどのように対処するか、と言うことを考えるのが、まさに家庭経営者の仕事です。いまだに、家庭の経営、家庭におけるお金の管理は妻の仕事、女性の仕事だと考え、家庭の主人が、自分自身の家庭の生活状況についてまったく情報を持っていないなどということは、ありませんね。そして、自分は、こづかいをいかに節約し、飲み代を作るかに苦労しているのに、値上がりで、生活が苦しいといって、これ以上こづかいを減額されてしまうと困るなどと、悩んでいることはないでしょうね。

 ここで考えなければいけないのは、こづかいをいかに工夫して使うかではないということです。家庭の経営者は、家庭全体の管理をする人です。家庭全体の管理者なら、こづかいが家庭全体にとって妥当な金額であるのか否かを検討するのが仕事です。

 たとえば、800円の外食ランチをやめ、560円の社員食堂に行くなどの努力は、子供でも考えます。家庭経営者は、電気やガスの水道光熱費が値上げによって増えたとき、夜間電力の割引プランを利用するなども一つの方法ですが、消費損益計算書を見て、日常生活費や外食費、交際費などのその他生活費で減額できるものはないのかとか、財産対照表の固定資産の自家用車に掛かるコストを再検討し、軽自動車に変えるとか、車を手放すとかについて、家庭決算書をベースにして、家族で話し合うと言うことが家庭経営者の仕事なのです。家庭の財産は、現在どれくらいの金額になっているのかなどの情報を持って、家庭経営をすることが必要です。家庭全体を管理し、家庭全体の見地から、いかに家庭を健全なものにしていくかということが、家庭経営者の大事な仕事なのです。

                                      (2008//8)

 

                 第17回 だます人に、だまされない

    世の中には、だます人とだまされる人がいます。

   たとえば、自宅で誰でもできる仕事などと言って出資を勧誘するとか、年利10%から100%の高配当を支払うなどといって出資金を集めたりする事件が起こっています。実際に、誰でもできる仕事で儲かるなら、勧誘する人が自分でやればよいわけだし、銀行金利などと比較すれば年利10%から100%の高配当など夢みたいなことだと考えざるを得ません。しかしだまされる人がいるのです。

そこで、だます人とだまされる人について考えて見ましょう。

   まず、だます人は、だますためにその知識を充分に持っていなければいけません。そして相手(だまされる人)を信用させなければなりません。そのための話術も巧みでなければいけません。だまされる人が、だまされていることに気づいてはまずいのです。結果として、だまされていなければならないのです。

 すべての取引が終わって、代金の回収も終わって、相手が気づくと言うストーリーにしなければいけないのです。決して途中で相手にだましていることを悟られてはいけないのです。途中で相手にだましていることを悟られてしまうと、すべてが水泡に帰してしまいます。したがって、まさにだます人は、相手を信用させるためによく研究をしているわけです。

このだます人に、うまくだまされてしまう人が世の中にはたくさんいます。

もし、だまされて、せっかく貯めたお金を払ってしまった場合には、家庭生活では、大きな問題が発生します。将来の生活設計が、全く狂ってしまう危険にさらされることにもなりかねません。

そこで、このような人たちに、だまされないためには、自分達も色々なことを勉強しておくことが必要です。たとえば、その会社の社歴、業務、社員数、取引内容や財務内容などをチェックできるようにしておく必要があります。また、もし内容がよく分からない場合には、問い合わせができる相手(役所や知人など)との連絡方法を用意して置くことです。  

 さらに、もし疑問に感じたら、お金を払わないことです。払ったお金は、二度と戻ってくることはないでしょう。ここでもう一度、消費満足について考えることです。お金は使うためにあるのですが、お金を使うことによって得られる満足を最大にすることが出来るのか。必要な情報を集め、夢と現実とのギャップはないか考え、自分の使える金額を財産対照表(バランスシート)をみて判断し、自分が納得できて、はじめてお金を支払うことです。そうすることによって、だまされることもトラブルに巻き込まれることもないようになるのです。

                                       (2008//4)

 

            第16回 家計の金融資産残高の減少と家庭決算書

日銀の資金循環統計によると、家計の金融資産とは、現金・預金、保険・年金準備金、株式・出資金、投資信託・株式・出資金以外の証券(投資信託を除く)、および、その他から構成されています。また、日銀が発表した1012月期の資金循環統計速報によれば、2007年末の家計の金融資産残高は、2006年末の1553兆9400億円に比べて、1545兆8300億円となり、約0.6%減少しました。

その内訳を見ると、現金・預金残高は784兆円で、前年度に比べて0.9%増、このほか、国債・財融債が対前年度比11.2%増の36兆円、

年金準備金が同5.8%増の177兆円、対外証券投資が同6.0%増の10.7兆円でいずれも過去最高となった。しかしながら、株式・出資金は前年比16.8%減少の164.7兆円となった。

この結果、家計の金融資産残高が減少したが、その主な原因は、サブプライム住宅ローン問題を背景とした、保有する株価の下落に伴う評価額の減少にあるとされている。

 株価の下落と家庭決算

株価の下落が家庭決算書に与える影響はどのようになっているのでしょうか。株価の下落は、お金の支出を伴いません。しかし、日銀の報告書にも表れているように、株価の下落は、家庭の資産を減少させています。

この問題を、お金の入金と出金だけでとらえていたのでは、家庭への影響を把握することはできません。

たとえば、現在保有している株式を100万円で購入したとすると、株式の評価額が16.8%減少したとすれば、保有している株式の価値は83万2千円になってしまったということになります。

これを家庭決算書で見ると、財産対照表(バランスシート)の資産の株式の金額が16万8千円減少し、一方、消費損益計算書の特別消費の資産評価損(有価証券評価損)に16万8千円が計上されます。この結果、当期消費損益が16万8千円減少し、その金額だけ正味財産が減少したことになります。

このように、お金の動きを伴わない金融資産の価値の増加や減少の影響を家庭の財産に反映させることによって、家庭の現状を正しく認識することができることになるのです。

                                     (2008//1)

 

             第15回 老後のあとの注意・・その2

老後の後に来る相続で、いかに相続人たちが納得し、円満に相続してもらうかと言うことを、老後に考えておく必要があります。

     残されたものが不幸にならないように、相続でトラブルを生じさせないようにするためにも大切なことです。

     財産対照表(バランスシート)で相続財産をチェック

      財産対照表(バランスシート)の正味財産(資産−負債)の金額があなたの相続財産になります。相続税の計算をする場合には、土地や建物、マンションなどを相続税評価額に計算しなおさなければなりません。しかし、基礎控除が5000万円+1000万円×相続人数あります。たとえば相続人が奥さんと子供が2人の場合には5000万円+1000万円×相続人数3人=8000万円となるので、相続財産の評価額の合計が、これ以上にならなければ、相続税が掛かることはありません。

       遺産分割による家族の破壊

      相続財産の金額が問題なのではありません。数千万円の相続財産であったとしても、兄弟姉妹が何人かいれば、相続財産を分けなければいけません。この財産を分けるときに問題が生じるのです。

     あなたは、相続税が掛からなければ、税金が取られないのだから、何も心配はないと思っていませんか。相続税が掛からない、税金が取られないということと、財産を分けるということとは違うのです。

  たとえば、土地付きの一戸建ての家に住んでいるとします。土地付きの一戸建ての家の相続税評価額が5千万円だとすれば、相続人が奥さんと子供が2人の場合には5000万円+1000万円×相続人数3人=8000万円となるので、相続税は掛かりません。(基礎控除=5千万円+相続人×1千万円あります)しかし、相続人が3人であれば、一人当たり約1千7百万円の相続財産をもらえることになります。そのために、この家を売却しなければならないこともあります。さらに、現金、預金や株式などがあれば相続財産は、もっと増えます。

 相続財産をどのように分けるかということが、家族を破壊させる原因になるのです。長男が多すぎるとか、お姉さんが多いとか、私は両親の面倒を見ていたのだからもっと多くもらえるはずだとか、さまざまな意見が出てきます。これらの意見を調整し、全員を納得させるための方法を、あなたは考えておかなければいけないのです。

     残されたものが不幸にならないように、いまのうちに、家庭決算書を利用して、お金を上手に使い、自分の財産を分ける方法を考えることです。

                                (2008//29)

 

            第14回 老後のあとの簿外債務に注意

                                               

      老後というとセカンドライフといって、第2の人生を如何に楽しむかと言うことがよく言われています。

 しかし、老後のあとに来るのは相続です。いかに相続人たちが納得し、円満に相続してもらうかと言うことを、老後に考えておかなければいけません。相続する財産は、財産対照表(バランスシート)で分かりますが、財産対照表(バランスシート)に表示される金額だけが問題なのではありません。残されたものが不幸にならないように、遺産相続の問題を生じさせないために、注意しておかなければいけないことを、次に考えてみましょう。 

  (簿外債務=無限連帯保証人の恐怖)

 あなたは、無限連帯保証人という言葉を今までに一度は、聴いたことがあると思います。たとえば、あなたの友人が、老後に自分の趣味を活かしてお店を開きたいとあなたに相談をしてきたとします。そして、駅のそばで立地も良く、絶対に成功すること疑いなしだと。ついては、出店に当たり、金融機関から借り入れをしなければならないのだが、借り入れには、第三者の連帯保証人が必要なので、あなたに是非なって欲しい、絶対に成功するし、あなたには絶対に迷惑を掛けないから、と頼み込まれたとします。昔からの友人で、断りきれず、家族に内緒で無限連帯保証人の欄に実印を押したとします。友人の商売がうまくいき無事に借入金が返済できれば、問題はありません。しかし、もし、商売がうまくいかず、借入金が返済できなくなくなった場合には、どうなるのでしょうか。あなたは、自分が亡くなってしまえば、そのあとには、この無限連帯保証人としての義務は、無くなると思っていませんか。無くなりません。                                無限連帯保証人としての義務は、奥さんやあなたの財産を相続した人たちに引き継がれるのです。したがって、もし知り合いの友人が、あなたが亡くなったあとに、借金を返せなくなったときには、奥さんやあなたの財産を相続した人たちが、この借金を支払わなければならなくなるのです。

     しかし、この無限連帯保証人というのは、財産対照表(バランスシート)のどこにも表示されていません。まさに、簿外になっているわけです。このように、帳簿に表示されない債務のことを、簿外債務といいます。

したがって、あなたが、このことを奥さんや子供達に、なにも言っていなかったとしたら、将来、相続した奥さんや子供達が、大きな債務を負う危険があるのです。

                             (2008//27) 

 

              第13回 異端児と複式簿記

 現在、ロビンソン・クルーソーも利用していた複式簿記を日本で知っているのは、総人口の何パーセントくらいなのか、ご存知でしょうか。

    そのパーセンテージは、なんと総人口の5%以下と言われています。

このことを知らなかった私は、以前、複式簿記を応用した家庭決算書のソフトを作り始めた頃、参加してくれた方達に、「複式簿記は世間の常識だよ。これを知らないで社会生活を送っているから、いろいろな問題が生じたときに、よい解決方法が見つからないんだ。みんなも早く複式簿記を理解して欲しいですね。」と、解説をしました。そのとたんに参加していた人から、「先生、複式簿記を知っている人は総人口の5パーセント以下ですよね。と言うことは、95%以上の人が複式簿記を知らない人ということになりますね。そうすると、私達が普通で、先生が異質つまり異端児と言うことになりますね。」と、鋭く指摘をされてしまいました。

まさに、現在、500年以上も続いているこの複式簿記を知らないで生活している人たちが大部分なのです。一体どうしてそのようなことになってしまっているのでしょうか。複式簿記が如何に私達にとって有用なものであるかと言うことは、歴史が証明しているわけで、世界中のすべての会社がこの複式簿記を利用していることからも明らかです。これからの時代を生き抜くためにはこの複式簿記を理解し、有効に使うことが必要なのです。

ドイツの文豪ゲーテも、名作『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』の中で、「複式簿記が商人に与えてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が生んだ最高の発明のひとつだね。立派な経営者は誰でも、経営に複式簿記を取り入れるべきなんだ」(山崎章甫訳 上P54 岩波書店)とその有用性を述べた場面はよく知られています。

今後、複式簿記を知っている人が総人口の50パーセント超えて、ゲーテが言うように会社や家庭の経営に、誰もが複式簿記をとり入れるようになり、私達が異端児と言われることがない社会を早く作りたいものです。

                                         (2008//24)

 

                    第12回「事業価値」と「家庭価値」

   最近は外国の会社が日本の会社を買収するとか、M&Aとか合併だとか言う言葉がマスコミをにぎわせていますが、会社が相手の会社を買収したりする場合の買収価格を決定する根拠はどのようになっているのでしょうか。

   会社の「のれん」と言う言葉があります。会社の「のれん」とは会社が持っているブランドや開発ノウハウ、人材など目に見えない無形の資産のことを言います。

最近の合併や買収のときの買収価格を決めるとき、その買収価格は会社の「時価純資産総額+のれん代」で決められています。

会社の「時価純資産総額+のれん代」のことを、「事業価値」といいます。

有形の資産をほとんど持たずとも高い事業性を持っていたり、大きな利益を上げていたりする会社、たとえば、ネットベンチャー企業の場合などがそうで、楽天が宿泊予約サイトの旅の窓口やオンライン証券のDLJディレクトSFG証券を買収したときには約571億円もの「のれん代」が発生しています。この買収される会社の事業価値は買収した会社が将来的に本業から生み出すと思われる純現金収支の合計金額を現在価値に割り引いて計算されると言われています。

時価純資産総額は、会社の貸借対照表(バランスシート)から計算されます。しかし、のれんと言われるものは、バランスシートから計算できない、目に見えない財産です。

この目に見えない財産の価値を評価して、高額な金額が支払われているのです。

それでは、家庭における目に見えない財産、「のれん」とはどのようなものでしょうか。

家庭の財産対照表(バランスシート)を見ると、純財産が大きければ家庭は安定していると言えます。しかし、純財産を増やすことだけにとらわれて、消費を切り詰めた生活をすることが、本来の合理的な家庭生活ということはできません。家庭における目に見えない「のれん」とは、家族それぞれが身につけている教養や趣味など無形の財産を言うのだと思います。昔から言われているように、困ったときに、芸は身を助けると言います。この無形の財産を身につけるためにお金を使うと言うことが、合理的、有効なお金の使い方でもあるのです。そして、家庭の「純財産+のれん」のことを「家庭価値」言うのです。

この「家庭価値」を高めることが、家庭の本当の財産を増やすことになるのだと思います。           

                                          (2008//21)

 

                   第11回「ロビンソン・クルーソー」も利用した複式簿記!

 

  子供の頃、世界名作全集などで「ロビンソン・クルーソー漂流記」を読んだことのある人は多いことでしょう。18世紀の初めにイギリスのダニエル・デフォーが書いたこの物語は、乗組員ロビンソン・クルーソーが、南米ブラジルからアフリカのギニア海岸に向けて航海中、船が難破して、カリブ海の無人島にたった一人流れ着く話です。

無人島にたった一人漂着したロビンソンは逞しく生き抜いていきます。彼は難破船から、食料品、大工道具、弾薬、武器、資材などを探し出し、それらをいかだに乗せて島に運び込む。小高い丘の中腹に岩に面した平地があるのを見つけ、そこに住居を定めると、周りにはくいを打ち、柵をめぐらせ、外敵が容易に侵入できないように要塞を作った。島内を探検しながら、野生のヤギや野鳥を見つけては銃で撃ち、食料に加えた。

さらには、大麦や稲を地面にまいて小さな畑を作り、ヤギを捕まえて家畜として飼うようになる。ヤギの皮から服を作り、粘土をこねて土器を焼きかまどもこしらえる。着々と孤島の生活を豊かに整えていくのである。難破船から持ち出した小さな財産を十分に活用して、孤島生活に前向きに立ち向かう姿がそこにある。

   彼は大変な働き者であり、それ以上に優れた経営者でもある。大麦の栽培は、そもそも鶏の餌袋の底に残っていた10粒ほどを捨てたことに始まるのだが、これが偶然穂をつけ数十粒の大麦をもたらす。彼はこの数十粒を大事にして、決して一度には蒔かなかった。リスク分散を図って、3分の1ほど残しておくのである。

実際、一回目に蒔いた種はすぐに乾季に入ってしまったため、芽を出さず、駄目にしてしまった。雨季に入る前にもう一度蒔いた種がようやく芽を出す。このときも、念のため一つまみほど種を残しておいている。

日記をつけ、継続的に報告書を作った!

やがて収穫のときが来るが、ロビンソンはこれを食べてしまわないで、さらに再投資を繰り返す。彼がこの大麦でパンを焼いて食べるのは、なんと四年目のことである。飼い始めたヤギもだんだんに数を増やしていき、ついにはその乳からバターやチーズが生産できるまでになる。

今日の経済風に言いか換えれば、資材や道具を十分に活用して、生活用品や食料を作り出す一方、そこから生まれてくる余剰を一度に使ってしまわずに、投資して拡大再生産を図ったのである。

その後、従僕フライデーやその父、スペイン人の漂流者なども加わって、島は少しずつ賑やかになっていく。結局、ロビンソンは28年間を島で送ることになるのだが、その頃には優に十数人を養えるくらいの食糧を生産できる規模に家計は成長を遂げていた。もう家計と言うより経済と言ったほうがいい規模である。実はこの人、ロビンソン・クルーソーは単なる乗組員ではなく難破する前は、貿易商人や農場経営者として、それなりの成功を収めていたのだ。経営の発想を使って、家計を運営していたと見ていい。

ロビンソン・クルーソーの行動は、衝動的ではなく勤めて計画的である。彼は帳簿そのものをつけていないものの(紙やインクは貴重品なのだ)、毎年、収穫した穀物や家畜の数量を正確に記録した彼の日記が、帳簿の役割を果たしていた。

彼は、労働の結果(例えば、大麦の種子をまいた量と収穫した量)をきちんと記録していた。しかも一年ごとに、財産の状況と損益の状況を整理している。自分の試行錯誤を積み重ねた記録こそが、絶海の孤島に暮らす彼にとって、自分を導いてくれるただ一人の師匠だった。

このように、ロビンソン・クルーソーは、毎年一年間を区切って、大麦などの成長の事実を日記につけ(事実を記録する)て、どれだけ大麦が増えたのか(財産の把握)という報告書と、大麦の収穫した量と蒔いた量との差額(損益の把握)の報告書を作っていました。このロビンソン・クルーソーの行為は、複式簿記そのものなのです。

 すなわち、複式簿記全体の流れは、1会計期間(1年間)の取引(会計事実)を記録(仕訳)し、分類・集計し、報告書(決算書)を作成することなのです。

複式簿記全体の流れ

1会計期間(1年間)

取引(会計事実)→記録(仕訳)→分類・集計→報告書(決算書)の作成

複式簿記は、今から500年以上も前に、人間の知恵によって作られました。そして、この複式簿記の知識を持っていることが、いかに役に立つかと言うことは、ロビンソン・クルーソーの話を通じてもわかると思います。

                                                                                  ( 2008//18)