依田宣夫の一言コラム

                                   第21回から第30回    

            

 

              

                                    2013年版「家庭決算書」

  記 帳 式 (内容紹介

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家計会計協会                                                                  

 

  第30回

  ビジネスパーソンの常識(その2)・・決算書

  第29回

   ビジネスパーソンの常識(その1)

  第28回

   定年後の家庭経営

  第27回

  株式投資の極意とは

  第26回

  サラリーマン経営

  第25回

  「継続性の原則」とお金の情報

  第24回

   ゴーイングコンサーン(継続)する、お金の情報

  第23回

  「決算書」と「簿記」

  第22回

  お金と上手に付き合う方法

  第21回  

  給料と給与所得

 

             第30回 ビジネスパーソンの常識(その2)・・決算書

 

   決算書がやさしく分かる、おもしろいほどわかる、スラスラわかる・・・などと決算書の本が、本屋さんにたくさん並んでいます。 

 会社の決算書とは、貸借対照表と損益計算書のことを言いますが、キャッシュフロー計算書を含めて、財務3表とも言います。

貸借対照表は、決算の日における会社の財産の内容を示し、損益計算書は、1年間の会社の経営成績を示すものです。また、キャッシュフロー計算書は、1年間に現金などのキャッシュが、会社にどれくらい入金し、支出されたかを示し、結果として決算期末のキャッシュの残高がいくらになったかを示すものです。

  これらの3つの決算書は、損益計算書がよくなれば、貸借対照表がよくなり、貸借対照表が よくなれば、キャッシュフロー計算書もよくなるというように、それぞれつながっています。

 それは、取引の発生が、損益計算書の中の科目だけでなく、その多くは、貸借対照表やキャッシュフロー計算書の中の科目と関連して処理されているからです。

たとえば、ガソリン代1万円を現金で支払った場合には、損益計算書に費用科目として車両関係費1万円を計上し、貸借対照表に資産科目の現金1万円を計上(減少)します。

また、得意先から注文がとれ、商品50万円を掛けで売った場合には、損益計算書に収益科目として売上50万円を計上し、貸借対照表に資産科目として、売掛金50万円を計上します。

 同時に、キャッシュフロー計算書のキャッシュは、1万円減少し、売掛金50万円は、代 金が回収されるまでは、キャッシュの入金は0円となります。

車両関係費と現金、売上と売掛金というように、科目を通じて3つの決算書はそれぞれつながっています。ですから、会社の経営状況を見極めるには科目の処理方法を、正しく認識する必要があります。

 この科目の処理方法を簿記では「仕訳」と言っています。したがって、仕訳が分かれば決算書が読めるといえます。

 現在、伝票入力さえすれば、簿記の知識がなくても、パソコンの助けを借りてすべて計算をしてくれ、帳簿から決算書までプリントアウトしてくれます。また、より詳しい経営に関する分析資料も出力することが出来ます。

 しかし、伝票入力をするときの科目の処理方法(仕訳)を知らないために、せっかく揃った決算書や経営の分析資料を十分に使いこなせない人が増えているのも事実です。簿記の科目の処理方法(仕訳)の知識がなければ、これらの資料を充分に使いこなすことは出来ません。まさに、「仕訳」が分からなければ、決算書を読むことはできません。

「仕訳」とは、取引を記録する方法のことで、通常、複式簿記では左側を「借方」・右側を「貸方」と言う簿記用語を使って仕訳をしています。しかし、この「借方」、「貸方」と言う簿記用語で、複式簿記の勉強をあきらめたり、放棄してしまった人が多くいます。

そこで、今回、わたしは、「借方」・「貸方」と言う言葉を使わずに「左側」、「右側」と言う言葉で仕訳をする勉強方法を考案しました。それは、次のような内容になっています。また、この取引を記録するためのルールとして、(1)科目の分類と(2)科目の増減処理とイメージ仕訳という、2つルールを決めています。 

     (1)   科目の分類についてのルール

     科目は、左側と右側に分けて、次のようにグループ分けします。

             科目の分類 

  左  側

右  側

 

 資産グループ 

 

 費用グループ

 

 負債グループ

 資本グループ

 収益グループ 

   (内   訳)

      資産グループ・・・現金、預金、売掛金など

      負債グループ・・・借入金、買掛金など 

      資本グループ・・・資本金、利益剰余金

      費用グループ・・・売上原価、給料、賃借料など

      収益グループ・・・売上、受取利息など 

   (2)   科目の増減処理についてのルール 

  1、左側(資産グループ、費用グループ)の残高は、左側にくる。

      仕訳は、増加の場合は左側、減少の場合は右側とする。

  2、右側(負債グループ、資本グループ、収益グループ)の残高は、右側にくる  。

      仕訳は、増加の場合は右側、減少の場合は左側とする。

  ( 事 例 )

        例えば、現金売上によって、現金が10増加したとします。

     ・現金科目(資産グループ)・・・増加なので左側

     ・売上科目(収益グループ)・・・増加なので右側

       (仕訳)

        現金  10 /  売上  10

                     となります。 

(イメージ仕訳)

       ホップ・ステップ・ジャンプの「イメージ仕訳」 

            {ホップ}科目付け・・・得意の勘定科目を探す

{ステップ}増減付け・・・その勘定科目が増加したのか、減少したのかを

                           判断する

{ジャンプ}左右付け・・・その勘定科目を左側に書くか、右側に書くかを

                           確認する

 

上記の事例の場合、イメージ仕訳をすると次のようになります。

 1、(ホップ) 科目付け・・・得意の勘定科目を現金だとすると、

      2、(ステップ) 増減付け・・・現金が増加、

      3、(ジャンプ) 左右付け・・・現金(資産グループ)の増加は左側

       となります。 

       そこで仕訳は、現金を左側に書けばよいので

     現金   10   /  売上     10

   となります。 

(事 例2)

例えば、電気代1500円を現金で支払ったとします。

      勘定科目は、現金と水道光熱費ですが、

      1、(ホップ) 科目付け・・・得意の勘定科目を現金だとすると、

      2、(ステップ) 増減付け・・・現金が減少、

      3、(ジャンプ) 左右付け・・・現金(資産グループ)の減少は右側

       となります。 

       そこで、仕訳は現金を右側に書けばいいので、

      水道光熱費  1500円   /  現金   1500円  

      となります。 

「イメージ仕訳」ができるようになれば、その取引が決算書にどのような影響を与えるかと言うこともイメージできるようになり、決算書だけでなく経営の分析資料も十分に使いこなすことが出来るようになるのです。    

  これらの詳しい内容は、拙著:「複式簿記であなたが変わる」---仕事が変わる・家庭が変わる---に、記載されています。                       

                                        (2008年5月28日)

 

              第29回 ビジネスパーソンの常識(その1)

 

今春、社会人となった20歳以上の男女を対象に行ったインターネット調査によると、仕事のほかにやってみたいことのトップ3は、「スキルアップを目的とした自己啓発」、「資格などの取得」、「社会人マナーを身に付ける」という結果だったそうです。

現在、自己啓発や資格などの取得のためのセミナーや研修会、また、英語検定とかFP取得などいろいろな検定試験があります。その一つで、簿記の検定試験には、学生を含めて毎年数十万人のひとが受験しているといわれています。また、社会人となると、「会社では、せめて簿記3級程度の知識が必要だよ」と、よく言われます。それは、会社の行為のすべてが簿記と関係しているからです。

 たとえば、あなたが、営業に配属されたとします。得意先を回り自社の商品を販売してくるように言われ、会社を一歩出たとします。会社から得意先まで会社の車を使用したとすると、ガソリン代は車両関係費、車の減耗は減価償却費、商品の注文が取れたとき注文請書を書きますが、その用紙は消耗品費、とあなたの行為はすべて会社の行為であり、すべて簿記と関係してくるのです。

 そして、得意先から注文がとれ、商品を納品して納品書を発行し、売上伝票で売上を計上したので、OKかというと、そうではありません。売上代金の回収方法が、その場で現金の場合は、現金売上、末締めの翌月末払いの場合には、売掛金売上になります。これらの処理もすべて簿記と関係しているわけです。

このように、ビジネスパーソンとして行動していることのすべてが、簿記と関係しているのです。

そこで、複式簿記の基本的な考え方が分かっていないと、何故このような処理をするのか、また、正しい処理はどうすればよいのか、判断することはできません。

 ビジネスパーソンとして行動したことのすべては、会社の決算で、一年間の会社の事業報告書として、決算書(報告書)を作成して、利害関係者の人たちに開示しなければいけません。

この報告書(決算書)を作るためのツールとして、複式簿記が利用されています。この複式簿記の目的は、「事実から報告書を作る」ことにあります。

また、この報告書(決算書)を会社では、財務諸表といい、貸借対照表と損益計算書から構成されています。(キャッシュフロー計算書を含めることもある)

この貸借対照表の項目(資産、負債、資本)の増減と損益計算書の項目(収益、費用)の発生、消滅について記録、集計する記帳システムが複式簿記なのです。

複式簿記は、会社のすべての取引を、原因と結果という2つの側面から把握していくものです。例えば、給料を現金で支払った場合には給料という費用科目が発生しますが、一方で同じ額だけ現金が減少します。この原因と結果という2つの側面を記録し、集計し、決算のときに貸借対照表と損益計算書に分けて作成するシステムが、複式簿記のシステムです。複式簿記によって作成された貸借対照表は、企業の財政状態を示し、損益計算書は、企業の1年間の経営成績を示すものです。

このように見てくると、複式簿記の知識は、会社に関係している人の「基本」であり、また、「常識」であると言えます。

もし、複式簿記を勉強したことがないとか、良く理解できていないと言う人がいらしたら、是非、複式簿記の知識を身につけてください。

また、今回、ビジネスパーソンとして、複式簿記の基本的な考え方を理解してもらいたいと思って、<「複式簿記」で「あなた」が変わる―仕事が変わる・家庭が変わるー>と言う本を出版しました。複式簿記の知識を身につけたいと思われる方は、是非、この本を参考にしてみてください

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                                           (2008年5月23日)

      

            第28回 定年後の家庭経営

 Aさんは、最近、給料日の後、学生時代の友人B君と毎月一回飲む事にしている。

 二人とも、もうすぐ定年を迎えるが、今日は今後どのように生きていくかについて話が弾んだ。定年と言うが、定年イコール老後か?老後とはどういうことかということについて、B君は、自分なりの考えを主張した。

 「現在、日本人の平均寿命は、80歳を超えていると言われている。何歳から老後と言う のかについては、特に定義はないと思うが、ある人は、定年になり退職し、社会的には現役を引退したら老後であるという。また、年金を受け取りはじめ、年金生活を始めた時からそろそろ老後と言う人もいる。しかし、自分のイメージとしては、孫が出来て、その孫たちから「じいじ」とか、「ばあば」と呼ばれるようになったとき、年取ったなあと感じるかもしれないが、会社を退職して、60歳代で老後と言われるのはちょっと寂しい気分がする。

それより、定年後、20年近くあるセカンドライフを如何に生きるかと言うことが問題だ。 老後と言うのは、やはり、気持ちの持ちようだと思う」と。

 

Aさんは、学生時代の友人B君と別れてから、自分なりに老後について考えてみました。自分が「老後の生活を送っている」と感じたとき、そして、何もする気力を失ったときこそ「老後」ではないだろうか? 元気で気力があれば「老後」と老い込むことはないから、本人の意識次第だろうと思う。 何歳であっても、何か目標を持って活き活き自分の人生を生き抜いている人は、たぶん、その人がやっていることや存在が、社会に貢献しているだろう。その人が、これから老後だと意識し始めた時が老後というのではないだろうか。

Aさんは、90歳で亡くなられた先輩のことを思い出していた。その先輩は、先立たれた奥様にも優しく、常に感謝の気持ちをもって接していたそうだ。そして、ご自身が80歳を過ぎて、趣味としてやっていたことは、油絵、俳句の会、詩吟の会、英会話、旅行、ゴルフなど多彩なものでした。また、英会話学校では80歳を過ぎても通える英会話学校として、その学校の広告にまで登場していたそうだ。90歳でなくなられた時に、我が人生に悔いは無しと言われたそうです。

 また、Aさんは、先輩に教えられたサムエル・ウルマンの「詩」を思い出していました。

  ・・・「青春とは人生のある期間ではなく、心の持ち方を言う。薔薇の面差し、紅の唇、しなやかな手足ではなく、たくましい意思、ゆたかな想像力、燃える情熱をさす。青春とは、人生の深い泉の清新さをいう。・・・青春とは臆病さを退ける勇気、安きにつく気持ちを振り捨てる冒険心を意味する。ときには、20歳の青年よりも60歳の人に青春がある。年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる。歳月は皮膚にしわを増すが、熱情は失えば心はしぼむ。・・・・・・・・・・・・・・・20歳であろうと人は老いる。頭を高く上げ希望の波をとらえる限り、80歳であろうと人は青春にして已む。」・・・

Aさんも、定年後に健全な家庭を維持し、どのように生きていくかと言うことを真剣に考えなければいけないと思うようになりました。

   今日、学生時代の友人B君との焼鳥屋での飲み代は、一人、3,500円でした。Aさんは、今まで、毎月50,000円の小遣いをいかに上手に使うかということに知恵を絞ってきましたが、何故、自分の小遣いが50,000円出せるのかと言うことについては、考えたことはありませんでした。しかし、定年後の家計のことを考えると、家庭の財産と消費損益を正しく認識し、奥さんと相談をしながら、これからの家庭経営をしていかなければいけないと思っています。

 定年後に起こると思われる問題は、どのようなことがあるのか、その問題にどのように対処していくことが必要なのか、また、対処できるのかということについて、家庭の経営者として考えることが、重要です。

 家庭の経営者として、定年という数年先に起こるであろう家族の出来事(ライフイベント)を想定すると、「定年後にゆとりある生活を送る」ためには、定年後のライフプラン(生活設計)をどのように立てたらよいのか、定年後の生活設計の中心になる公的年金は、いつからどのくらいもらえるのか、また、定年後に計画している夢や希望とその費用はどのくらい必要なのかなど、さまざまな事が次々と浮かんでくるはずです。そして、その資金は、いまの手持ちの預貯金と退職金でカバーできるのかどうか、今から検討しておかなければいけません。また、場合によっては、いまから目標に向かって積立を開始しなければならないかもしれません。
そのためにも、早急に定年後の家庭経営について、真剣に考える必要があるのです。

                            (2008年5月20日) 

 

 

                 第27回 株式投資の極意とは 

 株式投資の極意とは、安く買って、高く売ることです。相手の見える一対一の戦い、例えば、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島の戦いでは、宮本武蔵は、時間を遅らせたり、鞘を捨てた小次郎に対して、小次郎敗れたりと言ったりして、相手の心理を乱す作戦を使って勝利を得ています。一方、株式投資では、相手は見えません。どの会社の株に投資をするかの選択は自分でコントロールできますが、自分で操作をして株価を上げたり下げたりするということはできません。

   家庭経営の積極的な行動の一つとしての株式投資は、「将来の消費」に備えて、お金を運用することです。株式投資は、健全な家庭経営の下で、お金を運用する投資の一つです。

一般的に、個人の資産運用は分散投資が重要といわれます。この分散投資は、値動きの異なる複数の投資銘柄を対象に分散して投資したり、購入の時期を分けて、投資金額のリスクを軽減したりすることで、安定的な運用が期待できます。

       投資には、定期預金や国債などのように安定した利息収入をもたらすものと、株式や投資信託などハイリスク、ハイリターンのものがあります。したがって、投資するに当たっては、リスクを負うということを、きちんと認識して行わなければなりません。

              例えば、借金をして株などに投資をしたとすると、財産対照表(バランスシート)を見ればすぐ分かるように、株式と言う資産が増えたのと同時に、借入金という負債を膨らませただけで、正味財産のほうは少しも増えていません。株価が上昇したとしても、借入金の金利を上回る上昇がなければ、利益は出ませんし、一方、株価が下がると、株式の評価損が生じて(消費損益計算書―特別消費)、資産の株式の金額は減少します。しかし、借入金という負債だけはそのまま残り、その結果、正味財産が減少することになり、バランスシートは大幅に崩れてしまいます。

            リスクを犯して投資するということは、儲かったらもっとつぎ込む、損をしたら取り戻そうともっとつぎ込む、ということではありません。リスクのある投資には、最悪ゼロになっても大丈夫な資金を当てる、というのが鉄則です。(新・家庭経営:P40)

したがって、自分の負えるリスクの範囲を冷静に判断し、投資できる資金がどのくらいあるかを確認し、それに合った金融商品を選び出すことが重要です。とくに、子供の入学金とか家の頭金など無謀な投資は慎まなければいけません。

投資市場では、必ず勝者と敗者がいる。そして、自分が常に勝者になると言う錯覚をしてはいけません。自分が勝者になると言うことは、誰かが敗者になっていると言うことを認識していなければいけません。

   己を知って(自分の財産状況を確認する)、投資市場に参画することが、健全な家庭経営を 維持し、百戦危うからずへの近道になるのです。 

                             (2008//16)   

 

                    第26回 サラリーマン経営

サラリーマン経営とは、「サラリー」と「マン」と「経営」に分けられます。

サラリーマンとは、サラリー(給料)を運ぶマン(人間)ではありません。サラリーマンとは、サラリー(給料)を得て、それを如何に消費するかということを、マン(人間)として考える人のことです。また、健全な家庭経営を維持するために、家庭経営を、どのようにしていくかを考える人です。

 家庭の経営ができなくて、自分自身の人生設計はできません。まず、千里の道も足下より始まると言われるように、自分の足もとである家庭を見直すべきです。

家庭にある自分名義の普通預金や定期預金の現在の残高はいくらあるのか、マンションの購入価額はいくらだったのか、もし、現在売却したらいくらで売れるのか、また、住宅ローンの現在の残高はいくらになっているのか等についてついて、明確な数字で把握することが、家庭の経営者にとっては、必要なことなのです。

また、車やテレビなどを、Aさんが良いと言ったから買うと言うように、外部の情報だけで、購入してしまい、後からこんなはずではなかったと、後悔したりしないようにしなければいけません。

家庭の経営者として、家庭の財産状況はどのようになっているのか、会社と同じ立場に立って考えてみることも必要です。会社の自己資本と同様、家庭の正味財産を如何に増やすか、サラリーマンも考える必要があります。まさに、自分自身の経営ができなくて、自分自身の人生設計はできませんし、サラリーマン生活のゴーイングコンサーン(継続)もできません。

自分自身のおこづかいだけでなく、家庭において生じているさまざまな問題に対応するために、必要な現状の把握や分析が出来なくては、家庭の経営はできません。

毎月の収入は、どれくらいなのか、毎月どれくらいの消費をしているのか、税金や社会保険料をいくら支払っているのか、また家庭の資産は、現在どれくらいの金額になっているのか等について、自分たちの情報を持っていないで家庭の経営が出来ているとは、とてもいえません。

 家庭経営をするためには、家庭生活の事実を「数字」で知ることが必要です。事実から目を背けず、それを数字で知ることによって正しい判断が出来るのです。例えば、いま、債務超過になってしまっている家庭があったとしても、その事実を正しく認識することから改善がはじまるのです。

自分の家庭の家庭決算書を作って、自分自身の情報を数字で把握することができていたら、いま物を購入することが良いのか、まだ、待つべきなのかを判断したり、自分の家計が経営危機に瀕しているのかいないのかとか、家計のどこが問題かなどをはっきりさせることができます。

 事実を正しく認識できていないことが、生活の不安をもたらすことになり、事実を正しく認識することで、家庭の健全化計画を立てることが、可能となるのです。

   経済成長に伴う複雑化した社会の中で、健全な家庭生活を築くため、家庭の経営者は、さまざまな意思決定をしなければなりません。現実の家庭生活の実態を「数字」で把握することが、サラリーマン経営の第一歩となるのです。

                                                                                        (2008//13)

 

            第25回 「継続性の原則」とお金の情報   

 

 継続的情報を作る

 一年間の家庭生活が自分たちにとって、どういうプラスやマイナスをもたらしたかを判断して、それを翌年へ結びつけていくことが大切です。そのためには日々の記録をつけ、そのデータを蓄積し管理することが必要です。そして、このデータは、一年間で終わってしまうのでなく、翌年へつながっていく情報とすることによって、いろいろな判断が可能となります。あのロビンソン・クルーソーも、無人島で20数年間日記をつけ、1年ごとに財産の状況と損益の状況を整理し、1年間を振り返って、良い点、悪い点を客観的に分析しています。

 家庭生活においても、3年間、5年間で見ると、生活がどのように変化したのかという損益の状況や資産、負債の変動を把握したり分析したりすることが出来ます。

 企業会計原則一般原則の五「継続性の原則」では、「企業会計は、その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない」と、言っています。

その理由として、「・・・会計処理の原則及び手続きを毎期継続して適用しないときは、同一の会計事実について異なる利益額が算出されることになり、財務諸表の期間比較を困難ならしめ、この結果、企業の財務内容に関する利害関係者の判断を誤らしめることになる。・・・」と解説しています。   

  自分たちの家庭生活で、気づかなかった発見が必ずあります。また、継続的な自分の過去の情報から、自分の行為がどういう結果をもたらすのかを予測することも可能となります。

このように、日々記録したデータは、一年間で終わらせるのではなく、継続した情報として利用することによって、大きな価値が生まれるのです。

比較の大切さを知る

   家庭における財産は、資産が増加したり減少したり、負債が増加したり減少したりして、毎年、毎年、変化していきます。財産が、増加したり減少したりした変化は、比較することによって事実が明らかとなり、原因分析も可能となります。

     また、「・・財務諸表によって、企業の財政状態および経営成績を観察し、あるいはその収益力や流動性について、正しい判断を下しうるためには、単に一つの期間の財務諸表を見るだけでは不十分である。数期間を連続的に比較し、収益力が向上したか、低下したかなど、期間比較を試みなければならない・・・」(解説企業会計原則P81:黒澤清著:中央経済社)と言われています。

 例えば、今年マンションを3000万円で購入し、住宅ローンを2000万円組んだとすると、バランスシートには、資産としてマンションが3000万円、負債には住宅ローンが2000万円計上され、一年前と今年の財産の状況は大きく変化しています。こんな場合、バランスシートを比較することによって、その原因は、マンションの購入に住宅ローンを利用した結果ということが、すぐに分かります。

  さらに、消費については、予算を立て、実績と比較することによって、無理のない支出を心がけることが出来、安定した健全な生活を可能にすることが出来ます。

また、データを蓄積することにより、家計の中でどんな消費の比重が高いのかが把握できるだけでなく、家計の消費構造の変化や傾向もつかめてきます。それらが今後の予測の材料にもなり、これからのライフイベントに必要な資金を確保したり、家計改善を進めたりする上での貴重な参考資料ともなるのです。

このように、毎年、毎年の財産や消費の比較とか予算と実績の比較などによって、家庭生活の異常値の発見、傾向分析や将来の予測などが可能となります。(新・家庭経営:拙著:プレジデント社)

 また、家庭決算書を作るに際して、科目を設定します。科目というのは、計算を行うひとつの単位として、その内容を分かりやすく、簡潔に表現するために設けられたものです。科目の設定は、本来、自由に行うことが出来ますが、継続性という点では、自分たちがわかりやすい名称をつけ、一度決めた科目の名称はできるだけ変えないようにすることです。これは将来、科目ごとに比較したり、推移を見たり、分析する上で役に立つことになるからです。

                                    ( 2008//8 )

 

          第24回 ゴーイングコンサーン(継続)する、お金の情報

ゴーイングコンサーン(継続)

会社は、ゴーイングコンサーン(継続)を、常に心掛けています。会社には、株主、取引先、従業員など多くの人が関係しています。したがって、会社は、ゴーイングコンサーン(継続)していかなければいけないのです。そのために、ゴーイングコンサーン(継続)する、お金の情報として、企業会計原則に従った財務諸表を作り、相手の会社と競争し、相手に打ち勝ち、自らは生き続けていきます。もし、競争に負けた場合には、多くの人に迷惑を掛けることになりますが、会社としてのゴーイングコンサーン(継続)は終わり、M&Aや倒産をすることになります。

しかし、人間は、死ぬまでゴーイングコンサーン(継続)しなければなりません。人は、何があっても、生き続けていかなければいけません。現在の資本主義経済社会において、すべての人間が、勝者になれるわけではありませんし、また、たとえ負けたとしても、家庭は倒産できません。仮に自己破産したとしても、また、新たな生活を、つまり家計を維持・継続していかなければならないのです。したがって、自己破産などしないようにするために、自分自身の家庭経営をより強固なものにする必要があります。

家庭生活を充実させ、継続させていくために必要なものとして、いろいろな情報があります。この情報の一つに、お金に関する会計情報があります。

 家庭生活のお金に関する会計情報には、ゴーイングコンサーン(継続)していくお金の情報と、ゴーイングコンサーン(継続)しないお金の情報があります。私たちにとって、より有用な情報を提供してくれるのは、ゴーイングコンサーン(継続)するお金の情報です。

ゴーイングコンサーン(継続)しないお金の情報

ゴーイングコンサーン(継続)しないお金の情報とは、単式簿記によって、作られた情報を言います。

単式簿記は、現金取引と信用取引だけを記帳対象とし、発生した取引を一面的に処理するだけで、別に一定の簿記原理を有しているわけではない。・・・単式簿記は不完全簿記にすぎない・・(簿記論P.12:青木茂男・西沢修共著:税務経理協会)と言われています。

この「単式簿記」は通常、現金の入金と出金を毎日記録していき、月末に入金と出金の差額としての現金残高を計算したり、支出した金額を合計し、今月の消費がいくらかかったのかなどをチェックします。このように「単式簿記」とは、現金の入出金を基準にしてすべての取引を把握していこうとするものです。

 家計簿は単式簿記によって作られ、月末なら月末など、ある一定期間経過後の現金の残高を知ることはできますが、たとえば、一か月の間に食費や水道光熱費がいくらかかったのかなど、現金の増減の内訳を知るには、再度集計し直す必要があります。

つまり、単式簿記は、不完全簿記のために、結果としての現金の残高を知ることはできますが、その結果にいたるまでの原因を知るなど、継続的、システム的に原因と結果を把握することができないのです。

ゴーイングコンサーン(継続)するお金の情報

ゴーイングコンサーン(継続)するお金の情報は、複式簿記によって、作られた情報です。

複式簿記は、すべての資産、負債及び資本に及ぼす取引を記帳対象とする。複式簿記のもっとも大きな特色は、会計取引を、二面的に把握し、借方、貸方と呼ばれる左右両面に、取引を分解し記録し整理する点にあり、このため常に借方、貸方両面の合計の一致を持って、簿記処理の正否を自動的に検証することができる。(これを自動検証能力と言う)。また簿記の最終目的である貸借対照表や損益計算書は、全取引を対象とした会計記録から誘導することが可能である。このため、複式簿記は完全簿記と称される(簿記論P.11:青木茂男・西沢修共著:税務経理協会)と言われています。

  複式簿記は、取引を原因と結果という二つの側面から把握していくもので、これにより財産の計算と損益の計算を同時に行っていきます。また、取引の規則性に着目して、原因と結果とを同時に把握していこうとする記帳システムなのです。そして、ある一定期間(一年間)経過した後において、その期間に発生した取引の結果を集計し、資産や負債の残高を確認し、その損益も把握します。

複式簿記による家庭決算書は、ゴーイングコンサーン(継続)していきます。ゴーイングコンサーン(継続)して自分たちの家計をチェックできると言う点では、家庭決算書は、非常に利用価値が高いと言えます。

まさに、これからの時代は、ゴーイングコンサーン(継続)するお金の情報を持って、意思決定をしていく時代です。

                                         (2008//2)

 

            第23回  「決算書」と「簿記」

(1)   世界共通の言語

 書店では、会社の決算書の読み方、決算書がやさしくわかる本など、決算書に関する本が大流行です。

グローバル化が進み日本の企業が海外に進出したり、海外からいろいろな会社が日本に進出してきています。そして、会社が作る決算書も国際会計基準に従って作る時代になりました。日本でも海外でも、この決算書を作る考え方の基礎は、複式簿記です。複式簿記の考え方によってすべての決算書が作られています。まさに、複式簿記は、世界共通の言語と言えます。

また、会社と、家庭との関係からすると、会社は、複式簿記を利用して、毎年、財務諸表という決算書を作成しています。同様に、家庭では、複式簿記を利用して「家庭決算書」という継続的に利用できる会計情報を、毎年作成します。

 会社が作る決算書も家庭で作る家庭決算書も、ともに、決算書を作る考え方の基礎は、複式簿記です。複式簿記の考え方によって決算書が作られています。その意味で、まさに、複式簿記は、会社と家庭の共通の言語とも言えます。

(2)簿記的なセンス

現在、複式簿記の知識がなくても、パソコンの助けを借りて伝票を入力すれば、あとは帳簿の作成から決算書まですべてプリントアウトしてくれます。また、より詳しい経営に関する分析資料も出力することが出来ます。本当に便利になりましたが、そのなかで、せっかく揃った決算書や経営の分析資料を十分に使いこなせない、役員を含めた幹部社員の方、一般従業員の方、また新入社員の方たちが、増えているのも事実です。

複式簿記の知識がなければ、これらの資料を十分に使いこなすことは出来ません。

そして、会社にたずさわる人たちで、常識として複式簿記の知識を持っていたらよかったと思う人が増えているのも事実です。

大事なことは、それだけではありません。

この複雑化した経済社会において、いまほど簿記的なセンスが必要とされる時代はないのです。  

   複式簿記がわかっている、わからないということで、仕事の上で評価が左右されますし、さらに言えば家庭生活の面でも大きな差がついているのが現実です。複式簿記の知識を持っていることは、それだけ価値があることなのです。

(3)簿記の勉強

簿記の大切なことは分かっているが、どうも理解しづらい。簿記の入門書を読んでみたが、よく分からない。簿記の勉強を始めてみたが、つまらない、退屈で分かりにくいものだといって、どれだけ多くの人が簿記の勉強を放棄してきたことでしょう。

 簿記の勉強を始めた人が、すぐにギブアップしてしまう主な原因は、一口に言うと簿記用語の「借方」、「貸方」にあります。それは、「借方」、「貸方」という言葉の意味がよく分からないからです。「借方」が左側で、「貸方」が右側だと書いてあるが、なぜ借りが資産で、貸しが負債なのかよく意味が分からない。これで簿記をあきらめた、という人がとても多いのです。

そこで、「借方」、「貸方」という言葉を使わないで、もっと簡単に簿記が理解できる方法はないのだろうか。また、通勤途中の電車の中や家に帰って読むだけで分かるような、都合のよい、簿記の本はできないのだろうかと考えてみました。

そんな夢みたいなことにチャレンジして、今回、「複式簿記であなたが変わる」――仕事が変わる・家庭が変わるーという本を出版します。(5月2日発売・・アマゾン http://www.amazon.co.jp/dp/4990410106

この本は、複式簿記の基本知識から会社・家庭での利用まで、複式簿記がどのような考え方で作られているかということを、「借方」、「貸方」という言葉を使わないで、誰でも理解できるように書きました。      

   決算書を使って、会社の経営分析をし、会社の経営に対する評価や反省をして、今後のあり方を考え、将来の計画を作成しています。

したがって、この決算書の基本である複式簿記の知識は、会社にたずさわる人の常識と言えます。

まさに、複式簿記を知らずに、正確な会社の経営分析や利益計画などは、できるわけがないと言っても、言い過ぎではないでしょう。

このように、決算書と複式簿記は密接不可分の関係にあるのです。

                                        (2008//25)

 

            第22回 お金と上手に付き合う方法 

 

私たちの一生は、お金との縁を切ることは出来ません。2008年xx月22日、x時8分15秒、都内1丁目1番地1、xx病院にて男子誕生、父 太郎 、母 花子 ,命名 一郎・・・。この瞬間から、一郎君の周りには、ミルク、おむつ、ベッド、誕生祝の祝い金、おもちゃ等、お金に関するものが、たくさん集まってきます。一郎君は、今後、一生お金と付き合って生きていくことになります。

 私も何十年間にわたって、お金にかかわる仕事に関係してきましたが、お金との付き合い方を考えることは、私たちの家庭生活で非常に重要なことで、また、お金と付き合う方法を身につけることによって、私たちの生活をコントロールすることが出来ることもわかりました。

 私たちは、昔から1円のお金を粗末に扱うな。お金は大事なもの。命の次に大切なものと教えられてきました。確かに、お金は、私たちにとって必要なものです。

しかし、お金は大事なものですが、お金を貯めることが良いことで、お金を使うことは悪いことなのでしょうか?

私はどちらも良いことだと思います。ただ、どちらも度を過ぎると、大変な結果となり、バランスの取れた方法を考えることが大事なのです。

 例えば、ある人が、給料をもらい、飲まず食わずで、年間300万円、10年で3000万円、100年で3億円、貯めたとします。そして、100年後、1xx歳で、この方が亡くなられ、3億円が相続財産として残ったとします。この3億円を相続した子供たちは、大喜びしましたが、この人の人生は何だったのでしょうか。

お金を貯めるために節約することは良いことですが、ただお金を貯めるための人生、それも当人が納得していれば、決して悪いこととはいえませんが、何か変です。もし途中で、自分の家庭の健全性について考えていたら、お金の使い方が変わっていたと思います。自分の家庭の財産状態を、正しく認識していれば、お金を貯めるだけの人生ではなく、使い方についても考えることが出来たと思います。また、この人の家族たちは、節約のために家庭を犠牲にしてきたかもしれません。

 この方の例は極端ですが、単にお金を節約することだけではなく、お金を使うこととのバランスを考えることが重要なのです。

まさに、お金を節約することと、お金を使うこととの、バランスを考える時代になったのです。

 また、働くための力、エネルギーの源は、家庭にあるはずです。家庭の幸福や家族の幸福を自分の仕事と同様に考えることが大切な時代になったのです。自分たちの給料が、家庭でどのように生かされているかを考える時代になったのです。

現在、私たちの家庭生活では、妻や子供のこと、家を購入するか否か、老いた両親のこと、自分たちの老後のこと、リストラされることはないだろうか・・・など、さまざまな問題が生じています。

しかし、これらの問題への対応は、考えただけでも難しそうで、逃げ出したくなります。

 これに対して、たとえば、老後の問題については、老後にいくら資金が必要で、それには現状でいくら足りないと認識できれば、あとは不足額を形成していく手段を考えればよいことだし、また、失業の可能性があっても、今の貯蓄額で収入がなくても5年程度は生活できるとわかっていれば、不安にもならないはずです。

 このように見てくると、不安のほとんどの原因は、お金に関する不安が中心です。その意味でもお金の管理を自分で行う時代、すなわち、個人個人が、自己責任に基づく家計や資産の管理をすることが、求められる時代になっているということです。

そのためには、500年の歴史を持つ複式簿記のものの考えかたを利用すべきだと思います。複式簿記は、まさに、お金の経営・管理に有効なツールです。

そして、このツールを、私たちの家庭経営に活かすことが、まさに、お金と上手に付き合う方法なのです。

                                       (2008//22)

  (参考) 

       「借方」、「貸方」と言う簿記用語を使わずに、複式簿記のものの考えかたを

     やさしく理解するための本を出版しました。

      拙著:「複式簿記であなたが変わる」ー仕事が変わる・家庭が変わるー

        アマゾン: http://www.amazon.co.jp/dp/4990410106

 

 

                 第21回 給料と給与所得

 家庭生活を支えている収入の主たるものは、給料です。そして、学校を卒業して新社会人となり、初めて会社から自分の銀行口座に振り込まれた給料を手にしたとき、その喜びは大きいものです。

私たちが、日頃使っているこの給料という言葉の意味は、給料の手取額(実際に銀行口座に振り込まれる金額)であって、給料の総額を意味していません。すなわち、私たちが、給料といって、会社から毎月銀行口座へ振り込まれる給料の手取額(実際に銀行口座に振り込まれる金額)は、給料の総額から所得税、住民税、社会保険料等が天引きされた差額を意味しています。

本来、給料の総額を意味する給料というのは、所得税法上、賃金や賞与などとともに給与所得と言われています。 所得税法第28条第1項によれば、所得税法上、給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費、賞与及びこれらの性質を有する給与にかかわる所得を言うものとされています。

「これらの性質を有する給与」とは、単に雇用関係による労務の対価として支給される報酬と言うよりは広く、雇用又はこれに類する原因(例えば、法人の理事、取締役等に見られる委任又は準委任等)に基づいて、非独立的に提供される労務の対価として、他人から受ける報酬及び実質的にこれに準ずべき給付(例えば、各種の経済的利益等)をいい、換言すれば、労務の提供が、自己の危険と計算によらず、他人の指揮監督に服してなされる場合に、その対価として支給されるものが、給与所得であると言われています。

このように、給与所得とは、雇用契約又はこれに準ずる関係に基づいて、非独立的に提供される労働の対価をいい、具体的には雇用主から支払われる給与のみならず、委任契約に基づく役員報酬なども含まれます。したがって、その雇用関係等が継続的であるか一時的であるかを問わず、また、その支給名目の如何を問わず、提供される労務の内容について、高度の専門性が要求され、本人にある程度の自主性が認められる場合(国会議員の歳費や普通地方公共団体の議会の議員の報酬など、可成り性質の異なるものも給与所得とされている。) であっても、労務がその雇用契約等に基づき、他人の指揮監督の下に提供され、その対価として得られた報酬等である限り、給与所得に該当すると言わなければならないとされています。(京都地裁昭和56年3月6日判決)

 また、給与所得と事業所得との区分関係において、事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ、反復継続して遂行する意思と社会的地位とが、客観的に認められる業務から生ずる所得をいい、これに対し、給与所得とは、雇用契約又はこれに類する原因に基づき、使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付を言うとされています。

なお、給与所得については、とりわけ、給与支給者との関係において、何らかの空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり、その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならないとされています。(最高裁昭和56年4月24日判決)

 このように、給料などの給与所得とは、雇用契約又はこれに準ずる関係に基づいて、非独立的に提供される労働の対価をいい、具体的には雇用主から支払われる給与のみならず、委任契約に基づく役員報酬なども含まれます。また、給与所得には、金銭で支払われるものだけでなく、現物給与や経済的利益、たとえば、会社からボーナスとしてもらった自社製品、低額な社宅家賃等も含まれます。

                                           (2008//18)