全国企業短期経済観測調査(短観)
日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業がゼロとなり、前回の9月調査から5ポイント低下した。悪化は4四半期連続。海外経済の減速や10%への消費税増税が響き、2013年3月以来、6年9カ月ぶりの低水準となった。
世界経済の減速を受けて生産が低迷し、特に自動車はDIが13ポイント悪化した。一方、米中貿易協議は進展が期待され、半導体需要にも回復の兆しが見られる。国内では人手不足に対応する省人化設備の需要があり、企業の設備投資計画は底堅さを保った。
業況判断指数(DI)
2-1. DIはどのようにして算出するのですか。
判断項目については、調査対象企業からの回答(選択肢1〜3)を、以下のように算出される「DI」(ディフュージョン・インデックス<Diffusion Index>)という指標に加工・集計して、公表しています。
DI(%ポイント)=「第1選択肢の回答社数構成比(%)」−「第3選択肢の回答社数構成比(%)」
例えば、収益を中心とした全般的な業況に関する判断を示す「業況判断DI」は、「1. 良い」、「2. さほど良くない」、「3. 悪い」という3つの選択肢の中から1つを回答して頂き、それぞれの回答社数の構成比を計算した上で、「1. 良い」の社数構成比から「3. 悪い」の社数構成比を引いて算出しています。
具体例として、3つの選択肢の回答社数構成比について、「1. 良い」が30%、「2. さほど良くない」が60%、「3. 悪い」が10%の場合、「業況判断DI」は、「30%−10%=20%ポイント」となります。
なお、公表区分ごとのDI変化幅をみると、一見整合的でないケースもあります。例えば、下図のケースでは、全産業の「最近」から「先行き」にかけての変化幅はそれぞれ「0」ですが、内訳である製造業では「+2」、非製造業では「+1」と変化しています。
これは、DIを算出する際、「1. 良い」および「3. 悪い」と回答した社数構成比を整数化(小数点第1位を四捨五入)しており、「製造業」、「非製造業」、「全産業」の各区分において整数化を行う結果、四捨五入のずれが生じているためです。
(具体例)業況判断DI(%ポイント)
表 (具体例)業況判断DI(%ポイント)
|
最近 |
先行き |
変化幅 (先行き−最近) |
製造業 |
20 (30%−10%) |
22 (28%−6%) |
+2 |
非製造業 |
18 (25%−7%) |
19 (24%−5%) |
+1 |
全産業 |
20 (28%−8%) |
20 (26%−6%) |
0 |
また、DIの算出においては、企業規模の大小に基づくウェイト付けを行っておらず、いわば1社1票の単純平均の形をとっています。
2-2. 判断項目の回答をDIという指標に加工・集計するのは何故ですか。
集計データの利用に当たっては、それぞれの選択肢(1〜3)の回答社数構成比をそのまま利用することもできますが、例えば、長期の動きを時系列でみる場合などには、やや煩雑な面があります。そこで、これらの複数のデータの動きを一目で把握できるように、DIという一つの指標に集約したものを公表しています。
2-3. DIにはどのような利用方法がありますか。
判断項目については、「最近(調査回答時点)の状況」および「先行き(3か月後)の状況」を調査しており、DIも「最近DI」および「先行きDI」の形で算出しています。「先行きDI」の動きには、景気の状況や業種などに応じてある程度癖がある点には留意が必要ですが、企業が現状と比べ先行きをどのように展望しているかを推し量る材料になります。
また、DIと関連する計数項目(「業況判断DI」と「経常利益」・「売上高経常利益率」、「生産・営業用設備判断DI」と「設備投資額」など)を組み合わせて分析したり、足許と過去の類似する景気局面のDIを比較するなど、ユーザーの様々な目的に応じた分析を行うことが可能です。
2-4. 個別のDIをみる際にはどのような留意点がありますか。
例えば、需給・在庫に関するDIには、(1)国内での製商品・サービス需給判断(「需要超過」−「供給超過」)、(2)海外での製商品需給判断(「需要超過」−「供給超過」)、(3)製商品在庫水準判断(「過大〜やや多め」−「やや少なめ〜不足」)、(4)製商品の流通在庫水準判断(「過大〜やや多め」−「やや少なめ〜不足」)の4つがあります。
このうち、(3)については、回答企業自身の製商品在庫の過不足についての判断を回答して頂く一方、(1)、(2)、(4)については、回答企業の主要製商品・サービスの属する業界の需給および流通在庫の過不足についての判断を回答して頂くことになっています。従って、これらのDIを利用する際には、企業自身ないし業界という定義の違いにご留意願います。
また、(1)借入金利水準判断(「上昇」−「低下」)、(2)販売価格判断(「上昇」−「下落」)、(3)仕入価格判断(「上昇」−「下落」)の3つについては、水準(レベル感)ではなく変化の方向性を企業に回答して頂いています。「短観」のDIの多くは水準の判断を示していますが、これらのDIは、変化の方向性に関する判断を示している点にご留意願います。
このほか、一部のデータ系列については、集計方法の見直し等に伴う不連続が生じています。詳細は、「『短観』の解説 [PDF 717KB]」をご参照ください。なお、時系列統計データ検索サイトでは、ユーザーの利便性等を考慮し、連続した系列として取り扱っていますので、ご留意ください。
4. 物価見通しに関するQ&A
4-1. 「物価見通し」では、消費税はどのように取り扱われていますか。
調査対象企業に配付する調査表(および記入要領、記入例)に、「消費税など制度の変更の影響を除いてご回答ください」と明記しています。
4-2. 「『企業の物価見通し』の概要」に掲載されている「見通しの平均」とはどのようなものですか。
「見通しの平均」は、各選択肢の値(例えば、「+15%程度」であれば「+15%」、「+6%程度以上」であれば「+6%」と仮定)を選択肢毎の社数構成比(「分からない」、「イメージを持っていない」を除く)でウェイト付けした加重平均値です。
4-3.「物価見通し」のデータを利用する上で、注意すべき点はありますか。
「物価見通し」では、「販売価格の見通し」と「物価全般の見通し」の2項目に関する「1年後」、「3年後」、「5年後」の見通しについて、それぞれの選択肢の中から回答企業の判断に最も近いものを選択して頂いています。ただし、「販売価格の見通し」では現在の水準と比べた変化率をご回答頂いている一方、「物価全般の見通し」では各時点の前年比をご回答頂いており、両者のベースは異なりますのでご留意ください。
短観
短観(「タンカン」と読みます)は、正式名称を「全国企業短期経済観測調査」といいます。統計法に基づいて日本銀行が行う統計調査であり、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としています。全国の約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施しています。
短観では、企業が自社の業況や経済環境の現状・先行きについてどうみているか、といった項目に加え、売上高や収益、設備投資額といった事業計画の実績・予測値など、企業活動全般にわたる項目について調査しています。
短観は、国内外で利用されており、海外でも"TANKAN"の名称で広く知られています。
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